ラボ型開発のメリットやデメリットとは?請負型開発との違いを解説
ラボ型開発(ラボ型契約)とは、外部のリソースやチームを使ってシステムを開発する方法です。
本記事では、ラボ型開発のメリットやデメリットをご紹介します。
そのほか、ラボ型開発が向いているケースや依頼する時のポイントをお伝えするので、これからシステム開発を検討している場合はぜひ参考にしてください。
目次
ラボ型開発(ラボ型契約)とは?
ラボ型開発は、企業が外部の開発リソースやチームを活用してソフトウェアやITプロジェクトを開発する方法の1つです。
具体的には、クライアント企業が外部のパートナー企業と一定期間の契約を結び、専用の開発チームを構築してプロジェクトを進行させるという形をとります。
国内ラボ型開発と海外ラボ型開発の2種類に分けられる
国内ラボ型開発は、企業が自国の開発パートナーと契約し、専用の開発チームを構築する方法です。
言語や文化の違いが少なく、コミュニケーションがスムーズです。日本の商習慣や仕事のスタイルに合ったやり取りができます。また、タイムゾーンの違いによる遅延がなく、リアルタイムでのコミュニケーションが可能です。
ただし、国内の人件費は一般的に高いため、海外ラボ型開発よりもコストが高くなるケースが多いです。海外に比べて、国内では技術者の選択肢が少ない可能性があります。
一方で海外ラボ型開発は、企業が海外の開発パートナーと契約して、海外にある専用の開発チームを利用する方法です。
海外では多くの技術者がいるため、幅広いスキルセットを持つチームを構築できるでしょう。
ベトナムなどの一部の地域では、国内よりも人件費にかかるコストの削減が可能です。
近年では、コストよりもリソース確保のためにオフショアを利用するケースも見られます。
ただし、言語や文化の違いにより、コミュニケーションの問題が生じる可能性があります。海外の企業との契約では、法的リスクやセキュリティの懸念が高まる場合があるでしょう。
請負型開発との違い
請負型開発は、クライアントが外部の開発パートナーと特定の成果物やプロジェクトの完了を契約する方法です。請負業者は、与えられた仕様やスコープに従って作業し、完了後に成果物を納品します。
プロジェクトの要件や成果物が契約時に明確に定義されており、請負業者はその範囲内で作業します。請負業者がプロジェクトのリスクを負担するので、まったく開発に携わったことがない場合におすすめです。
また、ラボ型開発は柔軟性と継続的なコミュニケーションが必要な場合に、請負型開発は固定されたスコープとコスト予測可能性が重要な場合に適しています。
ラボ型開発が注目されている理由
ここでは、ラボ型開発が注目されている理由を2つご紹介します。
近年のデジタル変革に対応できるから
ラボ型開発では、アイデアを迅速にプロトタイプとして実現し、実際にテストすることが可能です。
これにより、実際の市場ニーズに基づいて素早く改善を行えるため、革新的なソリューションを生み出すスピードが向上するでしょう。
デジタル変革には、従来の手法では捉えきれない新しいビジネスモデルやサービスが含まれます。
ラボ型開発では、失敗を恐れずに実験する文化が根付いており、イノベーションを促進します。
また、アジャイル手法を取り入れることが多く、要件の変更や新しいアイデアの追加に迅速に対応が可能です。
これにより、デジタル変革に伴う環境の変化に柔軟に適応できます。
ラボ型開発では、AI、IoT、ビッグデータなどの最新技術を迅速に導入することが可能です。
そのため、企業は競争力を保ち、デジタル変革を推進できる効果が期待できるでしょう。
国内のIT人材が不足しているから
企業がデジタル化を進める中で、ITに関するスキルや知識を持つ人材の需要が急増しています。
特に、データ分析、AI、クラウドコンピューティングなどの分野で専門的なスキルを持つ人材が求められています。
日本では、少子化や教育システムの影響により、IT業界に参入する若手人材が減少中です。
このため、経験豊富な人材も含めて、全体的な供給が不足しています。
ラボ型開発では、特定のプロジェクトに必要なスキルを持つ外部の専門家やチームを利用することができます。
これにより、自社内の人材不足を補い、プロジェクトを円滑に進められるでしょう。
また、社内で新たに人材を育成するには時間とコストがかかりますが、ラボ型開発を利用することで、即戦力となる人材を外部から調達でき育成コストの大幅削減につながるでしょう。
自社のリソースをコアビジネスに集中させることができるため、戦略的な運営が可能になります。
プロジェクトに必要なリソースを外部から調達することで、業務効率の向上が期待できます。
ラボ型開発のメリット
ここでは、ラボ型開発のメリットを4つご紹介します。
コストを削減できる
ラボ型開発では、専用の開発チームを外部にアウトソースします。そのため、企業は内部でフルタイムの開発者を雇用する必要がなく、直接的な人件費を削減できます。
また、オフィススペースや設備などの固定費が必要ないため、間接的なコストを削減できるでしょう。ラボ型のパートナー企業がこれらのインフラを提供するため、クライアント企業はこれらの経費を抑えることが可能です。
優秀な人材チームを確保できる
ラボ型開発を提供するパートナー企業は、多くのプロジェクト経験を持つ熟練したエンジニアや技術者を雇用しています。そのため、クライアント企業は、自社で直接雇用するよりも、広範なスキルセットと専門知識を持つチームを利用できます。
ラボ型開発企業は、さまざまなプロジェクトでの経験があるため、プロジェクト特有の課題に対処する能力があります。経験豊富な人材を確保することで、プロジェクトの成功確率を高められるでしょう。
また、クライアント企業は自社で人材を採用するための時間と労力を節約できます。ラボ型開発企業は、優秀な人材を採用し、プロジェクトに適した人材を提供する役割を担います。
変更や修正に柔軟に対応できる
ラボ型開発では、専用の開発チームがクライアント企業に提供されます。プロジェクトの進行中に生じる変更や新たな要件に迅速に対応できるので、必要に応じてチームの構成や人数を調整することが可能です。
また、クライアント企業がプロジェクトの進行を直接管理することが多いため、要件の変更や優先順位の変更に柔軟に対応できます。アジャイルやスクラムなどの開発手法を採用することで、変更に迅速に適応できる体制を整えられるでしょう。
システム開発のノウハウやデータを蓄積できる
ラボ型開発では、専用の開発チームがクライアント企業のプロジェクトに継続的に取り組むため、プロジェクト固有のノウハウやスキルを蓄積できます。チームがプロジェクトに深く関わることで、設計や開発、テスト、デプロイメントなどのプロセスに関する知識として積み上がります。
また、チームが長期間にわたってプロジェクトに従事するため、チームメンバーがプロジェクトの背景やビジネスニーズを深く理解します。開発プロセスやシステムアーキテクチャに関するノウハウが蓄積されることで、将来的なプロジェクトでの応用や改善に役立つでしょう。
ノウハウやデータの蓄積によって、プロジェクトの効率が向上します。過去の経験を活用して、同じような問題を再度解決する必要がなくなり、開発のスピードが上がるメリットが期待できるでしょう。
ラボ型開発のデメリット
ここでは、ラボ型開発のデメリットを3つご紹介します。
人件費が高い
ラボ型開発では、クライアント企業のプロジェクトに専念する専用チームを持つため、そのチームの人件費はクライアント企業が負担します。専用チームであるため、稼働率が低い期間でも、契約期間中の人件費は一定額が発生します。
特に、高度な技術や専門的なスキルが求められるプロジェクトでは、こうした人材を確保するためのコストが増加する傾向にあるでしょう。
専用チームはプロジェクトの変動に応じて柔軟に対応できますが、プロジェクトのスコープが縮小したり、リソースが余ったりした場合でも、人件費は変わりません。このような非効率な状況でも、人件費が発生するため、コストが高くなる場合があります。
チームビルディングに時間がかかる
クライアント企業は、プロジェクトに適したスキルと経験を持つメンバーを確保するために、パートナー企業と協力してメンバーを選定する必要があります。最適な人材を見つけるまでに、時間がかかってしまうケースがあります。
新たに構築されたチームは、メンバー間のコミュニケーションを確立し、プロジェクトの目標や要件に対する共通理解を持つことが重要です。例えば、ミーティングやワークショップなどを通じて関係を築く必要があります。
また、チームメンバーが効果的に連携し、協力して作業するためには、互いの強みと弱みを理解することが大切です。チームダイナミクスを確立するには、時間と努力が必要です。
発注側のマネジメントの負荷がかかる
ラボ型開発では、クライアント企業が専用チームの運営を直接管理します。プロジェクトの進行やリソースの割り当て、スケジュール管理など、さまざまなマネジメントタスクが発生し、発注側の負担が大きくなるケースがあります。
マネジメントが適切に行われないと、プロジェクトのスケジュールが遅れたり、品質が低下したりする恐れがあるでしょう。
クライアント企業と開発チームの間にコミュニケーションのギャップが生じると、要件の誤解やプロジェクトの方向性のずれが発生するケースがあります。
また、発注側のスタッフにストレスや疲労が蓄積し、プロジェクト全体に悪影響を与える可能性があります。
ラボ型開発が向いているケース
ラボ型開発は、専用のチームを長期間維持するため、ソフトウェアの継続的な開発や保守が必要なケースに向いています。具体的には、既存のWebサービスの運営や、プロジェクトが長期的な場合などです。
また、アジャイル型開発など、柔軟なプロジェクト管理手法を採用している場合、ラボ型開発は適しています。変更や修正に迅速に対応するために、専用チームとの継続的なコミュニケーションが可能なラボ型が効果的です。
そのほか、高度な技術や専門的な知識が必要なプロジェクトや、大規模なプロジェクト、企業内部での人材リソースが限られている場合にも適しています。
ラボ型開発を依頼する時のポイント
ここでは、ラボ型開発を依頼する時のポイントを2つご紹介します。
開発実績が豊富であるか
開発実績が豊富な企業は、さまざまなプロジェクトで経験を積んでいるため、開発スキルやノウハウが高いことが期待されます。
多様なクライアントと仕事をしている企業は、幅広い業界知識や課題解決能力を持っている可能性が高いです。
また、実績が豊富な企業は、プロジェクトの成功率が高い傾向にあります。過去のプロジェクトで得た知識と経験を活用して、プロジェクトのスコープや要件を適切に理解し、効率的な開発プロセスを構築できるでしょう。
潜在的なリスクや問題に対する対処方法も熟知しているため、プロジェクトのリスクの軽減につながります。
実績が豊富であることは、他のクライアントからの信頼を得ている証拠でもあり、クライアント企業に安心感を与えます。安心して開発を任せることができるため、クライアント企業はコアビジネスに集中できるでしょう。
コミュニケーション体制が整っているか
ラボ型開発は、プロジェクトの進行中にクライアント企業と開発チームの間で頻繁なやり取りが行われます。要件の変更や仕様の確認、プロジェクトの進行状況の報告など、コミュニケーションがスムーズに行われることで、プロジェクトの進捗を正確に把握し、適切な対応ができるでしょう。
コミュニケーション体制が整っていると、プロジェクトの進行中に生じる問題やリスクを早期に発見し、スムーズに解決できます。適切なコミュニケーションがないと、問題が深刻化してプロジェクトの遅延や品質低下につながる恐れがあります。
また、クライアント企業と開発チームが協力してプロジェクトを進めるため、コミュニケーション体制が整っていることは、チームの協力と連携に不可欠です。
コミュニケーション体制が整っているかどうかは、使用するコミュニケーションツールやプロセスによっても左右されるケースがあります。プロジェクト管理ツール、チャットアプリ、ビデオ会議など、効果的なコミュニケーションをサポートするツールが活用されているかどうか確認すると良いでしょう。
ラボ型開発を依頼できるシステム開発会社
ここでは、ラボ型開発を依頼することができるシステム開発会社を5社ご紹介します。
サンシステム株式会社
サンシステム株式会社は、東京都杉並区に本社を構えるシステム開発会社です。
2015年に設立された会社であり、クライアントの業務効率化を目標にサービス提供をしています。
今までは、倉庫会社や物流会社などでの実績を多く積んでおり、中でも在庫管理システムの開発を得意としています。
そのほか、製造業向けの業務システムの開発も受託しており、生産・販売管理システムなどの主軸となるシステムも開発していました。
基本的には、開発業務委託というスタイルで受託しています。
ラボ型開発においては、マネジメントを組み合わせたスタイルが特徴です。
クライアントの要件を細かくヒアリングしてマネジメントすることで、段階的に大規模システムを構築します。
プレイネクストラボ株式会社
プレイネクストラボ株式会社は、本社を東京都品川区に構えているシステム開発会社です。
本社で働く社員の8割が外国人であり、ベトナムをはじめとする東南アジアや欧米など10か国以上を出身地とする社員が在籍しています。
プレイネクストラボ株式会社は、システム開発を受託するだけではなく、日本企業に対して海外の人材を紹介するマッチングサービスも提供しています。
そのほか、外国人エンジニアを採用するTalentHubというプラットフォームも運営しており、日本と外国をつなげるサービスに力を入れていることがわかるでしょう。
プレイネクストラボ株式会社が行うシステム開発は、オフショア開発と国内開発を組み合わせた体制が特徴です。
短期間での契約ではなく、半年から1年間の長期的な契約を結び、ヒアリングから納品まで時間をかけてクライアントの要望に応えようとする姿勢が魅力です。
また、多言語に対応しているので、海外向けのシステム開発を依頼したい場合に適しています。
株式会社Miichisoft Japan
株式会社Miichisoft Japanは、東京都渋谷区にて設立されたシステム開発会社です。
さまざまな開発実績がある中、業務システムやWebシステム、スマートフォンアプリ開発を得意としています。
母体となっているベトナムのMIICHISOFTは、オフショア開発会社での管理職の経験がある方々が創立しています。
設立されてから数年しか経っていませんが、製造・金融・建設・医療・ECなどのさまざまな分野の企業での開発実績が豊富です。
ラボ型開発では、約50%まで開発コストを削減、開発時間を短縮などの効果を実現しています。
株式会社Hinode Labo
株式会社Hinode Laboは、東京都渋谷区に本社を構えるシステム開発会社です。
クライアントの要望や予算、スケジュールなどをヒアリングするのはもちろん、請負契約とラボ型開発を柔軟に切り替えて利用ができる点が魅力です。
過去には、バイリンガル人材専門の転職サービス、共同購入型ショッピングモールなどの開発実績があります。
さまざまな業種や業態に対応しているので、どの企業も相談しやすいでしょう。
ラボ型開発の契約では、アジャイル開発にも対応しています。
株式会社GCode
株式会社GCodeは、東京都新宿区に本社を構えるシステム開発会社です。
ベトナムでのラボ型開発サービスを提供しており、コストを抑えながらも高品質なシステム開発を実現します。
今までには、不動産業界向けのWebシステム、Webシステム、アプリの開発実績があります。
また、本契約を結ぶ前に、トライアル契約をおすすめしている点が特徴です。
トライアル契約の間に対応力や品質などを評価してもらうことが目的であり、高品質なサービス提供に自信があることがわかるでしょう。
まとめ
ラボ型開発は、クライアント企業が専用の開発チームを外部に依頼する方式で、国内と海外の2種類に分けられます。継続的な専用チームを提供し、柔軟性が高い点が特徴です。
ラボ型開発のメリットとして、場合によってはコスト削減できたり、優秀な人材チームの確保できたりと、さまざまな利点が挙げられます。
一方で、人件費の高さ、チームビルディングの時間、マネジメント負荷があるため、把握しておきましょう。
ラボ型開発を依頼する際、メリットとデメリットを理解したうえで、開発実績の豊富さやコミュニケーション体制を確認しながら、プロジェクトに合ったパートナーを選択することが重要です。