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アーキテクチャ設計で成功させるポイントとは?種類や進め方を紹介

2024.07.11

アーキテクチャ設計とは、システムがどのように機能するのか、基本的な構造を定義して設計するプロセスです。

本記事では、アーキテクチャの種類や設計の進め方をご紹介します。

そのほか、アーキテクチャ設計を進めるときのポイントもお伝えするので、設計する予定がある場合は事前に確認しておくと良いでしょう。

アーキテクチャ設計とは?

アーキテクチャ設計とは、システムやソフトウェアの基本的な構造を定義し、設計するプロセスのことを指します。

これは、システムがどのように機能し、どのように相互作用するかを決定する重要なステップです。

アーキテクチャ設計は、システム開発の初期段階で行われることが多く、後続の開発作業の基盤となります。

開発チームは一貫した方向性を持ち、システム全体が効果的に連携することを確保できます。

また、設計の決定はプロジェクトの成功に大きく影響するため、慎重かつ包括的に行うことが重要です。

基本設計との違い

アーキテクチャ設計と基本設計は、システムやソフトウェア開発プロセスにおいて異なる段階と目的を持っています。

アーキテクチャ設計の目的は、システム全体の高レベルな構造と構成要素の関係を定義し、システム全体の枠組みを提供することです。

主な内容は、システムを構成する主要なコンポーネントやサブシステムを定義したり、各コンポーネントがどのように相互作用してデータの流れや通信がどのように行われるかを決定したりすることです。

一方で基本設計は、アーキテクチャ設計を基に、各コンポーネントや機能の具体的な設計を行い、システムの詳細な設計を提供することを目的としています。

主な内容は、各機能やサブシステムの具体的な動作を定義したり、データベースの設計や、データの流れ、データモデルを詳細に設計したりすることです。

高レベルの抽象的な設計を行うアーキテクチャ設計と比べて、基本設計はより具体的で詳細な設計を行います。

主なアーキテクチャの種類

ここでは、主なアーキテクチャの種類を4つご紹介します。

システムアーキテクチャ

システムアーキテクチャは、システム全体の設計と構造を定義するものです。

システムの構成要素とその相互関係を規定します。

システムアーキテクチャには、例えば単一層アーキテクチャやレイヤードアーキテクチャなどの種類があります。

単一層アーキテクチャは、システム全体を一つの大きなコードベースとして構築するものです。一度にすべての機能をデプロイできるため、デプロイが比較的簡単です。

小規模なプロジェクトでは、設計と開発を簡単に行えるメリットがあります。

しかし、システムが大きくなると、管理や拡張が難しいです。一部の変更がシステム全体に影響を与える恐れがあります。

レイヤードアーキテクチャは、プレゼンテーション層、ビジネスロジック層、データアクセス層など、異なる機能を持つ層に分割するものです。

各層が独立しており、他の層に依存しない設計が特徴となっています。

各層の変更が他の層に影響を与えにくく、各層が独立しているため、コードの再利用が容易に行える点がメリットです。

しかし、層間の通信により、パフォーマンスが低下する恐れがあります。層の数が多いと、設計が複雑になる可能性があるでしょう。

データアーキテクチャ

データアーキテクチャは、データの保存、管理、利用に関する全体的な構造と設計を定義するものです。

データアーキテクチャは、例えばリレーショナルデータベースやNoSQLデータベースなどの種類に分けられます。

リレーショナルデータベースでは、データが行と列で構成されるテーブルに格納されます。

トランザクション管理により、データの一貫性が確保される点が利点です。しかし、大量のデータを処理する場合、水平スケーリングが難しくなってしまいます。

NoSQLデータベースは、キー・バリューストア、ドキュメントストア、カラムファミリーストア、グラフデータベースなど、さまざまなデータモデルをサポートするものです。

水平スケーリングが容易で、大量のデータを効率的に処理できるメリットがあります。しかし、CAP定理に基づき、データの一貫性と可用性、分散性の間でトレードオフが発生するケースがあるでしょう。

システム基盤アーキテクチャ

システム基盤アーキテクチャは、システム全体を支える基盤の設計と構成を定義するものです。

ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、セキュリティなどの技術的な基盤をカバーし、システムの信頼性、可用性、スケーラビリティ、セキュリティを確保することが目的として挙げられます。

システム基盤アーキテクチャは、例えばクライアントサーバアーキテクチャやピアツーピアアーキテクチャなどの種類に分けられます。

クライアントサーバーアーキテクチャは、システムをクライアントとサーバーに分割し、クライアントがサーバーにリクエストを送信し、サーバーがそれに応答するものです。

サーバー側でデータやリソースを集中管理できるメリットがある一方で、サーバーが単一障害点となり高負荷に耐えられない場合があります。

ピアツーピアアーキテクチャは、すべてのノードが対等であり、中央サーバーを必要としないものです。

中央サーバーがないため単一障害点が存在しませんが、分散システムの管理が複雑に感じる場合があるでしょう。

プログラムアーキテクチャ

プログラムアーキテクチャは、ソフトウェアアプリケーションの設計と構造を定義するものです。

ソフトウェアがどのように機能し、どのように相互作用するかを規定します。

プログラムアーキテクチャは、例えばモノリシックアーキテクチャや分散アーキテクチャなどの種類に分けられます。

モノリシックアーキテクチャは、アプリケーション全体が一つの大きなコードベースとして構築されるものです。

小規模プロジェクトでは設計と開発が簡単である一方で、システムが大きくなると管理や拡張が困難になり、一部の変更がシステム全体に影響を与える恐れがあるでしょう。

分散アーキテクチャは、アプリケーションが複数の独立したコンポーネントに分割され、それぞれがネットワークを通じて通信するものです。

ノードを追加することで容易にシステムを拡張できますが、複雑な分散システムの設計と管理を行う必要があります。

アーキテクチャ設計の進め方

ここでは、アーキテクチャ設計の進め方を5つのステップに分けて解説します。

ステップ1.要件を明確にする

ここでは、システムがどのような機能を提供するかを明確にします。例えば、ユーザーがシステムを通じてどのようなタスクを実行するか、具体的な機能をリストアップすると良いでしょう。

要件が不明確だと、後の設計や実装で大きな問題が発生する恐れがあるでしょう。

すべてのステークホルダーの期待を統一し、プロジェクトの成功基準を明確にするために必要です。

ステップ2.各コンポーネントについて考慮する

ここでは、システムを構成する主要なコンポーネントを特定し、それぞれの役割と機能を定義しましょう。

例えば、ユーザーインターフェース、ビジネスロジック、データベース、外部サービスとのインターフェースなどです。各コンポーネントのインターフェース、依存関係、通信方法などを考慮しましょう。

また、コンポーネントの役割を明確にすることで、システム全体の構造が理解しやすくなり、開発やメンテナンスが効率的になります。

依存関係やインターフェースを明確にすると、各コンポーネントが独立して開発・テストできるようになります。

ステップ3.アーキテクチャを分割する

ここでは、システム全体を大きなコンポーネントに分割し、それぞれが独立して開発、デプロイ、スケールできるようにしましょう。

一般的なアプローチとして、モノリシックアーキテクチャ、マイクロサービスアーキテクチャ、レイヤードアーキテクチャなどが挙げられます。

また、分割することで、複雑なシステムを理解しやすくなり、管理が容易になります。

独立性を保つことで、変更や追加が容易になり、システムの柔軟性が向上するでしょう。

ステップ4.プロトタイプを作成する

ここでは、初期のプロトタイプを作成し、基本的な機能やアーキテクチャの妥当性を検証します。

このプロトタイプは、システム全体のスケルトンや主要な機能を含むものとします。

プロトタイプを用いて、主要なコンポーネント間の通信やインターフェースをテストし、設計の問題点を早期に発見・修正することが目的です。

また、プロトタイプにより、設計上の問題やリスクを早期に発見できるため、後の段階での修正コストを削減できます。

ステップ5.非機能要件を特定して定量化する

ここでは、性能、信頼性、可用性、スケーラビリティ、セキュリティなどの非機能要件を具体的に定義し、それらを測定可能な形で定量化します。

具体的な例として、応答時間の目標、ダウンタイムの許容範囲、セキュリティレベルなどです。

非機能要件を明確にすることで、システムの品質を確保し、ユーザーの期待に応えられるでしょう。

定量化された目標があることで、開発中や運用中にパフォーマンスを評価し、必要な調整を行いやすくなります。

アーキテクチャ設計のポイント

ここでは、アーキテクチャ設計のポイントを5つご紹介します。

1. 設計をビジュアル化する

アーキテクチャ設計をビジュアル化することは、複雑なシステムを理解しやすくし、関係者間のコミュニケーションを円滑にするために重要です。

システム全体の構造を視覚的に示すことで、各コンポーネントの位置付けや相互関係を明確にする利点が得られます。

技術者だけでなく、非技術者にもシステムの構造や動作を理解してもらうためにも役立ちます。

また、チームメンバーやステークホルダーとのコミュニケーションを円滑にし、意見交換やフィードバックを得やすくなるでしょう。複雑な依存関係や潜在的な問題を視覚的に確認できるメリットもあります。

2. パターンを限定しない

アーキテクチャ設計においてパターンを限定しないことは、柔軟性と適応性を持って設計に臨むことを意味します。

特定の設計パターンや技術に固執せず、プロジェクトの要件や環境に最適なソリューションを見つけられるでしょう。

プロジェクトごとに最適な設計パターンや技術を選択できるため、システムのパフォーマンスや効率が最大化されます。固定観念にとらわれず、最新の技術やトレンドを採用できるメリットにつながるでしょう。

また、適切な設計パターンを選ぶことで、プロジェクトのリスクを軽減できる可能性があります。既存のパターンに固執することで発生する潜在的な問題を回避できる可能性もあるでしょう。

3. はじめから完璧な設計を求めない

アーキテクチャ設計では、初期段階から完璧を目指すのではなく、柔軟性と適応性を持って設計を進めることがポイントです。

これはアジャイル開発の原則と共通する考え方であり、設計の過程で発生する変化や不確定要素に対して適応しやすくなります。

完璧を求めて初期段階で過度に詳細な設計を行うことによるリスクを軽減できる可能性があります。たとえば、時間やコストの浪費、変更への対応困難などです。

また、初期の設計が全て完璧であることを期待せず、継続的な改善とフィードバックを通じて最適化を図ることができます。

4. スコープクリープに注意する

スコープクリープに注意することは、プロジェクトの範囲が進行中に不正確に定義され、追加の要件や変更が頻繁に発生するのを防ぐための重要な考え方です。

スコープクリープが発生すると、開発の予算や時間、リソースの制約を超える恐れがあります。

アーキテクチャ設計では、プロジェクトの開始時に、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて明確な要件を定義することが大切です。

また、チーム全体でプロジェクトの進捗と変更点を共有する透明性を確保しましょう。

ステークホルダーとの定期的なコミュニケーションを通じて、変更や追加要件の理由と影響を説明し合意を得ることがポイントです。

5. インターフェイスを意識する

インターフェースを明確に定義することで、異なるコンポーネント間の責任を分離し、それぞれが独立して開発・テスト・保守できます。

複数のシステムやサービスが互いに連携するための規約や契約を明確にすることで、異なる技術スタックやプラットフォーム間でもスムーズな連携が可能となるでしょう。

また、インターフェースを介してのコミュニケーションを抽象化することで、内部の実装変更が他のコンポーネントに与える影響を最小限に抑えることができます。

まとめ

アーキテクチャ設計はシステム全体の構造と機能を計画し、設計するプロセスです。

基本設計とは、具体的なコンポーネントやモジュールの詳細設計に焦点を当てた段階であり、アーキテクチャ設計は全体の枠組みや相互関係を定義します。

主なアーキテクチャの種類にはシステム、データ、システム基盤、プログラムアーキテクチャがあります。

設計の進め方としては、要件の明確化から各コンポーネントの考慮、アーキテクチャの分割、プロトタイプの作成、非機能要件の定量化が挙げられます。

また、アーキテクチャの設計では、設計をビジュアル化して柔軟性を保ち、スコープクリープやインターフェイスの設計に注意することが重要です。これらのアプローチにより、効果的で持続可能なシステムの設計と開発が実現できるでしょう。