AWSのサーバーの種類と料金|サーバーの設置場所とは?よくある質問を紹介
システム構築を行う際、「どのサーバーを利用すべき」と悩む方がいるのではないでしょうか。
システムを構築するために必要なサーバーは、レンタルするかAWS(Amazon Web Services)などのクラウドサービスを活用するかの2つの方法から選べます。
どのサーバーを利用するのか決める際には、各サーバーやサービスの特徴を押さえることが大切です。
本記事では、AWSが提供しているサーバーの種類や料金、レンタルサーバーとの違いを紹介します。
そのほか、AWSサーバーの利用に向いているケースとそうではないケースをお伝えするので、レンタルサーバーの利用と迷っている方はぜひ参考にしてください。
目次
AWSのサーバーとは?
AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供しているクラウドサービスです。
AWSで利用できるサーバーは、通常のサーバーとは異なり物理的に存在するのではありません。仮想サーバーというクラウド上に存在するサーバーであり、個々でサーバーを準備する必要がないのがメリットの一つです。
またAWSのサーバーを利用する上で、さまざまなAWSサービスを利用できます。ストレージやデータベース、セキュリティ対策に合わせて、必要なサービスだけ導入が可能です。
AWSサーバーの種類と料金
AWSを導入する際には、AWSが提供しているサーバーの種類を把握しておきましょう。またAWSサーバーの料金は、従量課金制で決まります。
ここでは、AWSサーバーを3種類と各サービスの料金を紹介します。
Amazon EC2
Amazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)は、Amazonが提供する仮想サーバサービスです。Amazon EC2を利用すると、物理サーバーを準備せずにシステム環境を構築できます。
またAmazon EC2の料金は、稼働時間や地域、OSの種類によって変動します。
米国西部地域の場合、t2.microインスタンスを1時間利用すると0.0116USDで、日本円に換算すると1.56円です。m5.largeインスタンスは月額90~100USDほどで、日本円に換算すると月額12,412円〜13,792円ほどです。
ただし、ここで紹介した料金は2023年4月時点のものであり、時期によって料金が変動するケースがあると考えられます。
Amazon Lightsail
Amazon Lightsailは、AWSが提供している仮想プライベートサーバーです。
このAWSサービスには、サーバーだけではなくストレージやデータ転送など、システム構築で必要な機能が十分に揃っています。さまざまな機能がパッケージ提供されているので、Amazon Lightsail一つで精度の高いシステム構築が期待できるでしょう。
またAWSサービスの中から必要な機能を一つひとつ選ぶよりも、結果的にコストを抑えられるメリットがあります。
Amazon Lightsailの料金は、インスタンスプランや稼働時間、ストレージ、データ転送量などによって変動します。稼働時間に対する料金は、1時間単位で計算されるので、使い方によってはコスト削減にもつながるでしょう。
Amazon Elastic Beanstalk
Amazon Elastic Beanstalkは、アプリケーションの導入やバージョン管理など、迅速にデプロイの実行と管理を行えるサービスです。
このサービスを利用することで、迅速にアプリケーションを導入できるので、システム開発を急いでいる方に適しています。
そのほか、アプリケーションの状態のモニタリングなど、アプリケーションの管理に必要な作業を自動化できるので、作業の手間削減にもつながるでしょう。
またAmazon Elastic Beanstalkの料金は、インスタンスの稼働時間やリソース、データ転送量などによって変動します。リソースに対する料金は、ストレージやネットワーク、データベースなどさらに項目が細かく分かれています。
AWS Lambda
AWS Lambdaは、クラウド上にプログラムを定義して、インターネットを通じて実行できるサービスです。特に、サーバーレスでアプリケーション開発を行いたい方に適しています。
AWS Lambdaの料金は、稼働時間やリクエスト回数、メモリ使用量などの要素によって変動します。メモリ使用量は、128~10,240MBまでの範囲で設定が可能です。
AWSサーバーとレンタルサーバーの違い4つ
サーバーでのシステム構築を検討している方の中には、AWSサーバーかレンタルサーバーで迷っている方もいるでしょう。どのサーバーにしようか決める前に、AWSサーバーとレンタルサーバーの違いを把握しておくことをおすすめします。
ここでは、AWSサーバーとレンタルサーバーの違いを4つ紹介します。
導入費用や運用費用
サーバーの導入費用は、AWSサーバーのほうがコストを大幅に抑えられます。
レンタルサーバーは導入費用が発生しますが、AWSサーバーは初期費用ゼロで導入費用がかかりません。そのため、AWSサーバーのほうが導入するハードルが低いといえます。
また運用費用の場合、レンタルサーバーは一定の月額料金がかかる一方で、AWSサーバーは従量課金制で利用した分しか料金が発生しません。
小規模システムであれば、AWSサーバーのほうが運用コストを抑えられる可能性があります。
一方で膨大なデータを扱ったり24時間稼働したりする場合には、レンタルサーバーのほうが運用費用を抑えられるケースがあります。
通信速度
通信速度を重視するなら、AWSサーバーの利用がおすすめです。
レンタルサーバーの場合、アクセスが殺到すると通信速度が低下する恐れがあります。一方でAWSサーバーの場合は、ユーザーのアクセスなどの影響を受けず、快適に利用できる点がメリットです。
サーバーへの負荷を軽減するためにも、AWSサーバーを利用する企業が増えています。
スペックの柔軟性
スペックの柔軟性やカスタマイズ性を重視している場合は、AWSサーバーの利用がおすすめです。
レンタルサーバーの場合、プランごとにスペックが固定されているので、内容を変更したいときにはプランごと変更手続きを行わなくてはいけません。
一方でAWSサーバーの場合は、必要に応じてAWSサービスを導入したり削除したりできるので、自由自在にスペックを変更できます。
また利用できる容量の幅が大きいので、急に扱うデータ量が増えてもなんの問題もありません。
サーバーの運用義務
サーバーの運用にかかる手間を省きたい場合は、レンタルサーバーがおすすめです。
AWSサーバーの場合、システムの設計から運用までユーザー側で行う必要があります。
一方でレンタルサーバーの場合は、ベンダー側がサーバーの運用を行います。必要に応じてファイルをアップデートするだけなので、AWSサーバーと比べると大幅に運用の手間を省けるでしょう。
AWSのサーバーが向いているケース
AWSサーバーは、主にECサイトや企業サイトの構築に向いています。
ECサイトや企業サイトは、多数のユーザーにアクセスされやすいサイトなので、通信速度に優れているAWSサーバーの利用がおすすめです。
特にショッピングサイトの場合は、データの読み込み速度が重くなると、売上低下にもつながる恐れがあります。サーバー選びが原因で、大きな損失につながるケースもあるので注意しましょう。
AWSのサーバーが向いていないケース
AWSサーバーは、個人ブログの構築には向いていないといえます。
なぜなら個人ブログは、企業サイトと比べると小規模で開設でき、データベースを使用する必要がないためです。
個人ブログを運営する場合は、レンタルサーバーが適しています。サーバーを運用する手間を省け、運用にかかるコストの削減も可能です。
AWSサーバーを構築・運用する際のポイント
ここでは、AWSサーバーを構築・運用するときのポイントを8つご紹介します。
1. 事前準備をしっかり行う
AWSを利用する目的や要件をしっかりと定義することは、事前準備の最も基本的なステップです。
具体的には、どのようなサービスやアプリケーションを展開するのか、ダウンタイムを最小限に抑える必要があるのか、予算に応じたリソースの選定が行えるかなどを明確にしておきましょう。
AWS上にサーバーを構築する際、セキュリティ対策は欠かせません。
事前にセキュリティポリシーを策定し、それに基づいて設定を行うことが大切です。
2. IAMユーザーを使う
IAM(Identity and Access Management)は、AWSにおけるユーザーのアクセスと権限を管理するサービスです。
これにより、誰が何にアクセスできるかを詳細に制御できます。
IAMを利用することで、アカウント全体に管理者権限を与える必要がなく、最低限必要な権限のみを各ユーザーに付与が可能です。
また、AWSアカウントを作成した際に発行されるルートユーザーは、アカウント全体に対する無制限の権限を持っています。
しかし、ルートユーザーでの操作はセキュリティリスクが高いです。
ルートユーザーが侵害された場合全てのリソースにアクセス可能なため被害が大きくなったり、ルートユーザーの権限は削減できず誤操作によるリスクが高かったりするので、日常の運用では使用しないようにすると良いでしょう。
そのため、日常的な運用や作業には、IAMユーザーを作成してそれを使うことを推奨します。
一方でルートユーザーは、緊急時や特別な管理タスクのためにのみ使用することが推奨されます。
3. セキュリティグループを正しく設定する
セキュリティグループは、AWSの仮想ファイアウォールであり、インバウンドおよびアウトバウンドのトラフィックを制御するために使用されるものです。
特定のIPアドレスやポート番号に基づいて、どのトラフィックを許可または拒否するかを定義することが可能です。
セキュリティグループは、AWS内のリソース、特にEC2インスタンスに直接適用されます。
セキュリティグループは状態保持であるため、インバウンドで許可されたトラフィックはアウトバウンドも自動的に許可されます。
つまり、外部からのアクセスを許可すると、その応答は自動的に通過すると考えると良いでしょう。
また、セキュリティグループは、AWSにおける最初の防御ラインであり、適切に設定しないと外部からの攻撃やネットワークの乱用などのリスクが発生します。
そのため、セキュリティグループを正しく設定することが、システムの安全性とパフォーマンスを保つ上で非常に重要です。
4. ストレージタイプの違いを理解する
AWSのストレージサービスには、Amazon S3やAmazon EBS、Amazon EFS、Amazon FSxなどがあります。
Amazon S3は、耐久性が高く、グローバルにスケーラブルでコスト効率に優れたストレージソリューションです。
無制限の容量を持ち、データ量に制限がないので、膨大なデータを保存したい場合に最適です。
主な利用シーンには、バックアップやアーカイブデータの保存、大量の静的データ(画像、動画、ログファイルなど)の保存、 Webサイトのホスティング(静的ファイルの配信)などが挙げられます。
Amazon EBSは、データベースやファイルシステムなど、ディスクベースのアプリケーションに適した高パフォーマンスなストレージを提供するサービスです。
主な利用シーンには、データベースやファイルシステムのストレージ、高いパフォーマンスが必要なワークロード(OLTPデータベース、ビッグデータ処理)、低遅延アクセスが必要なアプリケーションなどが挙げられます。
Amazon EFSは、自動スケーリング機能を持ち、容量管理が不要であるサービスです。
主な利用シーンには、複数のEC2インスタンス間で共有するファイルの保存、データが頻繁に追加・更新されるアプリケーション(Webサーバー、コンテンツ管理システムなど)、ファイルベースのワークロード(メディア処理、機械学習のトレーニングデータなど)などが挙げられます。
Amazon FSxは、ファイルシステムの種類に特化したマネージドストレージサービスです。
Windowsファイルシステム用のFSx for Windowsと、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けのFSx for Lustreがあります。
FSx for Windowsは、Windowsサーバーに最適化された共有ファイルシステムで、Active DirectoryやSMBプロトコルをサポートしています。
FSx for Lustreは、HPCやビッグデータ解析に特化した高パフォーマンスのファイルシステムで、大量のデータ処理が必要なワークロードに対応する点が特徴です。
5. 外部にサービスを公開する時はElastic IPを使用する
Elastic IP(EIP)は、AWSが提供する静的なパブリックIPアドレスで、AWSアカウントに属しており、EC2インスタンスなどのリソースに割り当てることができます。
通常のパブリックIPアドレスはインスタンスを再起動すると変更されてしまいますが、Elastic IPはそのまま維持されるため、外部から安定してアクセスできる点が特徴です。
Elastic IPを使用することで、インスタンスが再起動した場合でも、Elastic IPを割り当てている限り、外部のクライアントは同じIPアドレスを使って接続できます。
これにより、DNS設定や外部クライアントの接続先を変更する手間が省けるでしょう。
万が一、インスタンスに障害が発生した場合でも、Elastic IPを別のインスタンスに再割り当てすることができるため、サービスの中断を最小限に抑えることが可能です。
6. バックアップができるストレージを設定する
バックアップは、システム障害、誤操作、サイバー攻撃などに備えるための重要な手段です。
適切に設計されたバックアップ戦略により、データ損失やダウンタイムを最小限に抑え、ビジネスの継続性を保つことができます。
AWSでは、簡単に自動化されたバックアップやリストアプロセスを構築できるため、定期的なバックアップの取得や保管を行うことで、信頼性の高い運用が可能です。
7. 重要データを分散配置する
AWSのインフラは、各リージョン内に複数の可用性ゾーンが存在します。
可用性ゾーンは、物理的に隔離されたデータセンター群で、それぞれ独立した電源、冷却、ネットワークを備えています。
データを複数のAZに分散することで、1つのAZに障害が発生しても、他のAZに配置されたデータにアクセスすることが可能です。
また、一部のAWSサービスは、マルチAZ配置をサポートしており、自動的に別のAZにフェイルオーバーできる仕組みを提供しています。
これにより、アプリケーションのダウンタイムを最小限に抑えられるでしょう。
8. システムの冗長性と可用性を把握しておく
冗長性は、システムの一部が障害を起こした場合に備えて、同じ機能を持つコンポーネントを複数配置することを指します。
冗長な構成によって、ある一部がダウンしても他のコンポーネントがその役割を引き継ぎ、システム全体の継続的な稼働を保証します。
可用性は、システムが常に稼働している状態を維持できる能力のことです。
高可用性システムは、ユーザーに対してダウンタイムを最小限に抑え、いつでもアクセス可能な状態を提供します。
AWSでは、可用性を向上させるための多くのサービスがあり、設計段階から可用性を考慮することが重要です。
AWSのサーバーに関するよくある質問
AWSサーバーを利用する前に、現在思っている疑問を解消しておきましょう。
ここでは、AWSサーバーに関するよくある質問を4つ紹介します。
過去にサーバーダウンなどのトラブルの事例はある?
過去にあったAWSサーバーの大規模トラブルの中で代表的なものは、2019年の8月に起こった大規模障害です。
ap-northeast-1(東京リージョン)で生じた大規模障害であり、原因はAWS側の冷却システム障害でした。サーバーの温度が許容範囲を超えてしまい、サーバーダウンにつながっています。
さらに、AWSサービスのパフォーマンス劣化なども生じてしまいました。ショッピングサイトやキャッシュサービスサイトなどのシステムにも障害が生じたことで、数々の大規模な影響を及ぼしてしまったといわれています。
また、2017年3月には、us-east(米国東部リージョン)でAWS側の人為的操作ミスによって大規模障害が発生しています。
2021年には3度の障害が発生しているので、これからもAWS側の原因でシステム障害が生じる恐れがあるといえるでしょう。
サーバー構築にかかる時間はどれくらい?
AWSサーバー構築にかかる時間は、Amazon EC2インスタンス作成の場合所要時間1時間ほどです。
ただし、既存システムを移管する場合、扱うデータ量によって移行が完了する時間が大幅に異なります。膨大なデータを移行する際、数年かかるケースがあるので理解しておきましょう。
AWSでSSL証明書を発行する方法とは?
AWSでSSL証明書を発行する手順は、以下の通りです。
- AWSのコンソールにログインする
- AWS Certificate Managerサービスの画面に遷移する
- 証明書のリクエストのページを開いて、Amazonからパブリック証明書をリクエストする
- 証明書を発行したいドメインを入力する(ドメインを取得しておく必要がある(AWSで取得する事も可能))
- 3、4を実施後、AWSへSSL証明書の発行をリクエストする
AWSでSSL証明書を発行するには、AWS Route 53でCNAMEレコードを作成する必要があります。
またAWSでは、複数のドメインで証明書の発行が可能です。WebサイトやアプリケーションのSSL化は、ユーザーの個人情報などを守るために重要なのでぜひ実施してください。
AWSのサーバーの設置場所はどこ?
AWSのサーバーの設置場所は、千葉県印西市や東京都多摩市、東京都23区内、神奈川県横浜市などさまざまです。世界規模でサーバーが分散配置されており、好きなサーバーを利用できます。
しかし、基本的に設置場所は非公開なので、詳しい場所はわかりません。
まとめ
AWSサーバーを導入することで、クラウド上でシステムを管理できるので、自分でサーバーやHDDなどを準備する手間が省けます。
AWSでWebサイトを公開する方法は主に4種類あるので、自社に合ったものを選んでシステム構築やクラウド意向などを効率的に行いましょう。
またレンタルサーバーの利用を考えている方は、AWSサーバーとの違いを把握した上で、AWSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
場合によっては、レンタルサーバーよりもAWSサーバーのほうが向いているケースがあるので、本記事で紹介したAWSサーバーに向いている場合とそうではない場合をぜひ参考にしてください。
これからAWSを導入しようか考えている方の中で、AWSサーバーに対する疑問を持っている方は、勘違いや導入後の後悔を避けるためにも疑問点を解消してから導入しましょう。