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AWSペネトレーションテストのメリットや実施手順を紹介|成功率を高めるためのポイントとは?

2024.12.20

AWSペネトレーションテストは、AWS上のシステムに対してセキュリティの脆弱性を調査するテストです。

本記事では、AWSペネトレーションテストの種類や実施するメリット、ポイントをご紹介します。

実施する流れも解説するので、これからAWSペネトレーションテストを実施する予定があり、事前に流れを把握しておきたい場合はぜひ参考にしてください。

AWSペネトレーションテストとは?

AWSペネトレーションテストとは、AWS上でホストされているインフラやアプリケーションに対して、セキュリティの脆弱性を発見するために実施するテストです。

このテストは、AWS環境がサイバー攻撃にどれだけ耐えられるかを評価するために行われます。

主に、アプリケーション、ネットワーク、ストレージ、インフラなどの脆弱性を評価します。

AWSインフラで潜在的な脆弱性を特定し修正措置を講じたり、攻撃者の視点でシステムを検証し内部から外部にかけてどのような攻撃が可能かを確認したりするのが目的です。

種類1. 外部ペネトレーションテスト

外部ペネトレーションテストは、インターネットを介して外部からシステムへの攻撃をシミュレートするテストです。

攻撃者がインターネット経由でターゲットにアクセスするシナリオを想定して行います。

主に、ファイアウォール、公開Webアプリケーション、DNS設定、VPN、クラウドサービスなど、外部に公開されているリソースに対する脆弱性を評価します。

テストの内容は、ポートスキャンやサービスの識別、攻撃対象となり得るWebアプリケーションの脆弱性検出、ネットワークアクセス制御やファイアウォール設定の評価などです。

種類2. 内部ペネトレーションテスト

内部ペネトレーションテストは、組織内部からシステムへの攻撃をシミュレートします。

通常、内部のユーザーが、悪意を持った攻撃者として、ネットワーク内部に侵入した場合を想定します。

内部ネットワークやシステムへのアクセスを模倣し、アクセス制限やデータ保護、権限管理の弱点を発見することが目的です。

テストの内容は、内部ネットワークでの脆弱性スキャン、社内アプリケーション、データベースへのアクセス、管理者権限やユーザー権限の適切な制御の評価などです。

種類3. ホワイトボックスとブラックボックステスト

ホワイトボックステストとブラックボックステストは、ペネトレーションテストを実施する際のアプローチの違いを示します。

これらはテスト対象に対する情報量の差によって分類されます。

ホワイトボックステストは、テスト者がシステムの内部構造、コード、設定情報などの詳細を把握して行うテストです。

テスト者はターゲットの内部情報にアクセスできるため、システムの脆弱性を深く掘り下げて検出できます。

ソースコードのレビューや設定ミス、脆弱性の深層分析などが含まれます。

ブラックボックステストは、テスト者がターゲットシステムについて一切の事前情報を持たず、外部からの攻撃者の視点で行うテストです。

通常、ユーザーのようにシステムにアクセスし、公開された情報やアクセスできる範囲で攻撃を試みます。

攻撃者がどのように侵入するかをシミュレートするため、システムに対する知識は最小限です。

AWSペネトレーションテストのメリット

ここでは、AWSペネトレーションテストのメリットを3つご紹介します。

1. 脆弱性を早期発見できる

ペネトレーションテストを実施することで、外部からの攻撃が実際にどのように影響を与えるかをシミュレーションし、未発見の脆弱性を早期に発見できます。

その結果、攻撃が実際に発生する前に防御策を講じることが可能です。

実際の攻撃者がどのようにシステムに侵入し、どの脆弱性を突く可能性があるかをシミュレートするため、ペネトレーションテストは非常に現実的です。

攻撃者は、AWSの設定ミスや過剰な権限設定、弱い認証方法などを利用して不正アクセスを試みるため、これらの脆弱性を早期に発見できます。

また、AWSのようなクラウド環境には、従来のオンプレミスシステムとは異なる特有の脆弱性があります。

例えば、IAMの設定ミス、S3バケットのパブリックアクセス設定、過去のデータが残ったままのEC2インスタンスなどが挙げられるでしょう。

ペネトレーションテストを実施することで、これら特有のリスクを事前に洗い出し、対策を取れます。

2. セキュリティを強化できる

AWS環境は、オンプレミスのシステムとは異なり、動的でスケーラブルなインフラを提供しますが、その分、設定ミスや構成ミスによる脆弱性が潜んでいることがあります。

ペネトレーションテストを実施することで、これらの潜在的な問題を早期に発見し修正対応が可能です。

また、ペネトレーションテストでは、攻撃者の視点を取り入れてシステムのセキュリティを評価します。

攻撃者は通常、システムの脆弱性を突いて不正アクセスを試みますが、テストを実施することで、どのように攻撃が成功する可能性があるかを事前に検証が可能です。

この視点での評価は、防御策を強化するための重要な手段です。

3. コンプライアンスを遵守できる

AWSを利用している企業は、クラウドインフラやデータ管理においてさまざまなコンプライアンス基準を遵守する必要があります。

これらの基準は、データセキュリティやプライバシー、リスク管理の実施を求めており、ペネトレーションテストはその一環として重要な役割を果たします。

また、ペネトレーションテストを行うことで、システムの脆弱性や設定ミスを発見し、攻撃者がそれらを悪用するリスクの低減が可能です。

これにより、セキュリティインシデントやデータ漏洩のリスクを減らし、コンプライアンス基準に要求されるリスク管理を強化できます。

AWSペネトレーションテストを実施する際のポイント

ここでは、AWSペネトレーションテストを実施する際のポイントを4つご紹介します。

1. テストを実施する範囲を明確にする

ペネトレーションテストの目的は、システムに潜むセキュリティの脆弱性を特定し、攻撃者がどのようにその脆弱性を突いてシステムに侵入するかを理解することです。

しかし、テスト範囲が不明確だと、テストが過度に広範囲になりすぎたり、逆に重要な部分がテストされなかったりするリスクがあります。

適切な範囲設定は、テストの精度を高め、効率的にセキュリティ強化が進められるため、最初に十分に検討する必要があります。

ペネトレーションテストを実施する際は、関係者と十分にコミュニケーションを取り、テスト範囲を共有することが重要です。

関係者との調整により、テストの進行を円滑にし、システムに与える影響を最小限に抑えられます。

2. 適切なツールを選ぶ

AWS環境にはさまざまなリソースがあり、これらのリソースをテストするために最適なツールを選定することが重要です。

例えば、インフラストラクチャやネットワークの脆弱性をチェックする場合と、WebアプリケーションやAPIのセキュリティを評価する場合では、使用するツールが異なります。

AWS EC2インスタンスやVPCに対する脆弱性を調査する場合、ネットワークスキャニングツールが有効です。

AWS上でホストされているWebアプリケーションの脆弱性をチェックするためには、Webアプリケーションセキュリティテストツールが適しています。

3. テストの進行状況や攻撃方法を詳細に記録する

進行状況の記録は、テストの進行がスムーズであることを保証し、途中で発生した問題や予期しない状況を把握するために重要です。

記録を詳細に残すことで、テストの範囲をきちんと管理し、後からテストがどの段階にあるかを確認できるため、効率的な進行管理が可能になります。

例えば、テストの開始時間、終了時間、各ステップで実行したテストの詳細を記録することで、テストの進捗を追跡でき、予定通りにテストが行われているか確認できるようになります。

また、ペネトレーションテストでは、さまざまな攻撃手法やツールを用いてセキュリティの弱点を突くため、それらの手法やツールの使用状況を詳細に記録することが大切です。

これにより、テストが終了した後に使用した手法やツールを再度検証し、必要に応じて改善策を講じられるでしょう。

4. 結果をもとにセキュリティ対策を講じる

テスト結果に基づいて発見された脆弱性を優先順位に基づいて評価し、最もリスクの高い脆弱性から対応を始めることが重要です。

まず、脆弱性がどのシステムやデータに影響を及ぼすかを確認しましょう。

外部からアクセス可能なシステムの脆弱性は、内部のものよりも優先的に対処すべきです。

脆弱性の優先順位が決まったら、修正と対策を実施します。

具体的には、ソフトウェアやシステムに脆弱性がある場合メーカーが提供するパッチやアップデートを適用したり、AWS環境内で誤った設定が原因で脆弱性が発生している場合その設定を見直し最小権限の原則に基づいた設定に変更したりします。

これらの対策を講じることで、脆弱性を修正し、攻撃者がシステムにアクセスすることを防げるでしょう。

AWSペネトレーションテストを実施する手順

ここでは、AWSペネトレーションテストを実施する手順を6つのステップに分けて解説します。

ステップ1. テストの目的を明確にする

ペネトレーションテストを開始する前に、テストの目的を明確にすることが最も重要です。

目的を設定することで、テストの方向性が定まり、どのような脆弱性を発見したいのか、どの部分を重点的にテストするのかを決定できます。

具体的な目的が定まっていないと、テストが散漫になり、リソースを無駄にする可能性があります。

例えば、クラウド環境内のアクセス制御の弱点を特定する、AWSサービスの設定ミスや脆弱性を発見する、ソーシャルエンジニアリング攻撃を通じて企業のセキュリティ意識を評価するなどが目的例です。

ステップ2. 対象システムに関する情報を収集する

このステップでは、システムに関する基本的な情報、ネットワーク構成、使用しているAWSサービス、セキュリティ設定などを調べて、攻撃者の視点からシステムにどのようにアクセスできるかを把握します。

情報の収集方法は、システムのインフラやアーキテクチャの設計書、AWSのIAM設定やセキュリティグループ、ネットワークACL、公開されている情報などを確認するなどさまざまです。

ステップ3. 脆弱性スキャンでシステム全体を評価する

情報収集が完了したら、脆弱性スキャンを実施してシステム全体を評価します。

この段階では、システムの各コンポーネントに対して脆弱性をチェックします。自動化されたツールを使ってスキャンを行い、既知の脆弱性やセキュリティの不備を特定します。

評価する項目は、ソフトウェアのバージョンと脆弱性、不適切なセキュリティ設定、ネットワークアクセスコントロールの不備などです。

ステップ4. 実際にシステムに侵入を試みる

このステップでは、発見された脆弱性を利用してシステムに侵入し、攻撃者がどのようにシステムにアクセスするのか、またシステム内でどれだけ権限を取得できるかを確認します。

手動での攻撃も行うことがあり、攻撃ツールやカスタマイズされたスクリプトを使用する場合もあります。

試みる侵入手法は、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング、脆弱性を利用した攻撃、AWSのIAMポリシーや権限昇格攻撃などです。

ステップ5. 必要に応じて追加の攻撃を行う

侵入を試みた後、システムに更なる攻撃を加え、攻撃者がどの程度までシステムを制御できるかを検証します。

これには、権限の昇格や横展開、データの漏洩などが含まれ、攻撃のシナリオに応じて追加的な攻撃を試みる場合もあります。

攻撃が成功した場合、その後にどれだけシステム内のデータにアクセスできるかをテストするケースが多いです。

そのほか、データベースや他のAWSリソースへの不正アクセス、攻撃によって生成されたバックドアを利用して再度侵入を試みるケースもあります。

ステップ6. テスト結果をまとめる

最後に、ペネトレーションテストの結果を整理し、報告書を作成します。

この報告書には、発見した脆弱性や攻撃経路、システムへの侵入に成功した手法、リスク評価、推奨されるセキュリティ対策などを詳細に記載しましょう。

報告書は、システム管理者やセキュリティ担当者が次の対応を決定するための重要な参考資料となります。

具体的には、各脆弱性の詳細、発見された問題に対する修正方法や対策案、テスト中に使用したツールや攻撃手法、攻撃の結果や証拠を記載することがポイントです。

まとめ

AWSペネトレーションテストは、クラウド環境のセキュリティを強化するために不可欠な手法です。

外部や内部からの攻撃シナリオを想定し、ホワイトボックスやブラックボックス方式で実施します。

テストによって脆弱性を早期に発見し、セキュリティ強化やコンプライアンス遵守につながります。

実施の際は、テスト範囲の明確化や適切なツール選定、進行状況の記録、結果を基にした対策が重要です。

最終的にテスト結果をまとめ、次のセキュリティ対策に活かしましょう。