AWSとSalesforceの違いとは?データ連携のメリットやサービスの組み合わせを紹介
AWSとSalesforceは、どちらもクラウドベースのサービスであり、連携することでビジネスで役立つさまざまなITリソースを提供します。
本記事では、AWSとSalesforceの違いについて、機能面や料金体系、セキュリティなどさまざまな観点から解説します。
そのほか、AWSとSalesforceを連携するメリットや活用例、簡易コールセンターシステムを作成する流れをご紹介するので、顧客データの管理やコールセンターでの対応、データ分析などを効率化したい場合はぜひ参考にしてください。
目次
AWSとは?
AWSは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。
企業や開発者がインフラをオンデマンドで利用できるように、さまざまなITリソースを提供します。
企業は自社でサーバーやデータセンターを所有・管理することなく、必要に応じてリソースをスケールアップやスケールダウンでき、コストを効率的に最適化したい場合にもおすすめです。
AWSは、セキュリティ、パフォーマンス、可用性に優れ、世界中に広がるデータセンターを活用しています。
Salesforceとは?
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Salesforceは、クラウドベースのCRMソフトウェアのプラットフォームです。
企業が顧客情報、営業、マーケティング、カスタマーサポート、分析などの業務を効率化するために使用します。
Salesforceは、クラウド上で提供され、インターネットを通じてアクセスできるため、企業は自社のインフラに依存することなく柔軟にシステムを運用が可能です。
主な機能としては、顧客データの管理、営業チーム向けのツール、マーケティングオートメーション、カスタマーサポートツール、データ分析などがあり、これらのツールを統合して顧客との関係を深められます。
AWSとSalesforceの違いとは?
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AWSとSalesforceの違いについて、機能面、料金体系、スケーラビリティと柔軟性、セキュリティの観点から解説します。
機能面
AWSはクラウドインフラストラクチャを提供するプラットフォームです。
仮想マシン、データベース、ストレージ、AI、機械学習、IoTなど、多岐にわたるサービスを提供しており、企業はAWS上でさまざまなアプリケーションを構築・運用できます。
主に、開発者やシステム管理者向けのインフラが中心です。
SalesforceはCRMに特化したクラウドベースのソフトウェアプラットフォームです。
顧客データ管理、営業支援、マーケティングオートメーション、カスタマーサポートなど、顧客との関係を管理するツールを提供します。
主に、営業チームやカスタマーサービスチーム向けの機能が中心です。
料金体系
AWSの料金体系は、利用したリソースに応じた従量課金制です。
例えば、サーバーを使用した時間やデータ転送量、ストレージの使用量などが課金の対象となります。
ユーザーは必要なリソースを使った分だけ支払い、スケールアップやダウンも柔軟に調整できます。
Salesforceは、基本的にサブスクリプション型の料金体系です。
ユーザー数や使用する機能に応じて月額料金が決まります。
Salesforceにはさまざまなプランがあり機能が異なるため、企業の規模や必要に応じてプランを選べます。
スケーラビリティと柔軟性
AWSは非常に高いスケーラビリティを持っており、インフラを必要に応じて動的に拡張・縮小が可能です。
リソースの利用量に応じて柔軟に調整できるため、小規模なスタートアップから大規模な企業まで対応できます。
また、AWSのサービスは幅広く、特定のニーズに応じたカスタマイズも可能です。
SalesforceはCRMに特化しているため、スケーラビリティや柔軟性はあるものの、主に営業やカスタマーサポートのニーズに合わせた拡張が行われます。
サードパーティ製アプリの導入や、プラットフォームのカスタマイズが可能ですが、AWSほど広範なインフラやリソースの管理には対応していません。
セキュリティ
AWSは、データ暗号化、アクセス制御、監視ツール、バックアップ、災害復旧など、多層的なセキュリティ機能を提供しています。
企業が自社で設定するセキュリティポリシーやアクセス管理を細かく設定できるため、セキュリティ要件が厳しい企業にも対応可能です。
Salesforceも強力なセキュリティ機能を提供しており、ユーザー認証、データ暗号化、アクセス制御などの機能があります。
SalesforceはCRMのため、顧客情報や取引データの保護が特に重視されており、業界のセキュリティ規格にも準拠しています。
ただし、AWSと比較すると、Salesforceは主にソフトウェアとしてのセキュリティ機能に焦点を当てており、インフラ自体のセキュリティに関してはAWSほどのカスタマイズ性はありません。
AWSとSalesforceのデータ連携のメリット
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ここでは、AWSとSalesforceをデータ連携するメリットを3つご紹介します。
1. 顧客サービスを最適化する
AWSとSalesforceを統合すると、顧客に関するデータを一元管理し、リアルタイムで情報を共有・活用できるようになります。
Salesforceは顧客情報や取引履歴、サポート履歴などのCRMデータを保持し、AWSは大量のデータストレージや分析機能を提供します。
その結果、顧客の情報が常に最新の状態で、必要な場所に即座にアクセスが可能な環境を実現できるでしょう。
AWSのクラウドインフラとSalesforceのCRMが連携すると、データの更新がリアルタイムで反映されます。
例えば、顧客からの問い合わせに対応しているオペレーターは、Salesforceのインターフェースを使って顧客情報に即座にアクセスでき、AWSを活用してバックエンドでのデータ処理や分析結果をリアルタイムに取得できます。
これにより、迅速かつ正確な対応が可能になり、顧客の満足度の向上が期待できるでしょう。
2. 業務プロセスの自動化・効率化を図る
AWSとSalesforceを連携させると、顧客情報や取引履歴が両システム間で自動的に同期されるようになります。
手動でデータを入力・更新する必要がなくなって時間と労力が大幅に削減されたり、データの一貫性が保たれるためエラーや重複のリスクも低減したりします。
また、SalesforceのプロセスビルダーやAWSのLambdaなどの自動化ツールを活用すると、定型的な業務プロセスの自動化が可能です。
例えば、Salesforce内で顧客が問い合わせを送信すると、そのデータがAWSのバックエンドシステムに渡され、適切な処理が自動的に行われて、結果がSalesforceにフィードバックされます。
これにより、オペレーターの負担を軽減し、応答速度を向上させられるでしょう。
3. セキュリティを向上させる
AWSとSalesforceの連携において、重要なデータは常に暗号化されます。
AWSは、データの転送中および保存時に強力な暗号化技術を使用してデータを保護するため、外部からの不正アクセスやデータ漏洩を防ぎ、機密情報を安全に取り扱えます。
Salesforceも、データの暗号化を提供しており、特にSalesforce Shieldを使用すると、データ保護や監査ログの強化が可能です。
これにより、両方のシステムで連携されるデータが常に保護され、セキュリティリスクを低減できます。
また、AWSとSalesforceを連携する際、ユーザーのアクセス権限を厳密な管理が可能です。
AWSでは、IAMを使用して、ユーザーやアプリケーションに対するアクセス権を細かく設定できるので、システム内で誰がどのデータにアクセスできるかを管理し、不正アクセスを防止できます。
Salesforceでも、役割ベースのアクセス制御やプロファイルを設定して、ユーザーの権限を管理でき、特定の情報やデータへのアクセスが適切に制限され、権限のないユーザーが重要な情報にアクセスするのを防ぎます。
AWSとSalesforceの連携パターンとメリット
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AWSとSalesforceの連携の組み合わせは、さまざまなパターンがあり、業務に合わせて組み合わせるのがポイントです。
ここでは、AWSとSalesforceの連携パターンと、各パターンのメリットをご紹介します。
Amazon ConnectとSalesforce Service Cloud Voice
Salesforce Service Cloud Voiceは、Amazon ConnectとSalesforceをシームレスに統合し、音声通話、デジタルチャネル、そしてCRMデータをリアルタイムで統合する新しいコンタクトセンターソリューションです。
Salesforce Service Cloud Voiceでは、Amazon Connectによる音声通話の転写機能を活用し、エージェントとスーパーバイザーが通話とCRMデータを同時に表示できます。
また、Salesforce Service Cloud Voiceは、クラウドベースのテレフォニー、自動音声認識、およびAmazon Connectによるセンチメント分析を、主要なカスタマーサービスプラットフォームにあらかじめ組み込んでいます。
統合により、電話を含むさまざまなコミュニケーションチャネルのオムニチャネルルーティングが簡素化され、エージェントは迅速かつ効率的に顧客の問題を解決でき、より個別化されたカスタマーサービスの提供が可能です。
AWSとTableau(BI)
Tableauは、AWSのパブリッククラウドサービスと統合すると、企業がデータから得られる価値を最大化し、既存の技術投資を活用できるようにサポートします。
具体的には、Amazon Redshift、Amazon Aurora、Amazon Athena、Amazon EMRなどのAWSデータソースに直接接続することから始まります。
Tableauは企業全体でデータを広範囲に活用できるように、多様なデータ活用機能を提供するサービスです。
特に、Tableau ServerはAmazonのクラウドインフラに完全に適応しており、AWS上でアプリケーションを展開したい企業にとって最適な選択です。
AWSとTableau Softwareのベストプラクティスを遵守すれば、完全に機能するTableau Server環境をAWSクラウドにデプロイできます。
デプロイには、AWS CloudFormationテンプレートを利用し、新規または既存の仮想プライベートクラウド内にシングルノードアーキテクチャを自動的に展開します。
AWSとSalesforce MuleSoft
既存のコネクタやAPIを活用すると、AWSとMuleSoftのクラウド戦略を加速させ、データをシームレスに統合が可能です。
まず、Anypoint Platform Private Cloud EditionをAWSにインストールするために必要なリソースを準備しましょう。
Anypoint Platform PCEは、AWS上での本番環境において、4ノードおよび7ノードの構成をサポートしています。
なお、ベアメタルサーバーを使用する場合、この情報は不要です。
次に、AWSプロビジョナーを実行します。
MuleSoftは、AWSアカウント内のリソースをプロビジョニングするために使用可能なDockerイメージを提供します。
また、プロビジョニングされたインスタンスには、カスタムシェルスクリプトを追加で実行すると、さらに柔軟な設定が可能です。
AWSとSalesforce Slack
SlackはSalesforceの一部であり、AWSとの戦略的な提携を通じて、両サービス間の深い統合を進めます。
ツールは孤立して使用するのでは効果が限定的であり、SlackはAWSと協力して、分散したチームが毎日使用するアプリケーションや情報に簡単にアクセスできるようにし、全員の作業効率を向上させるための製品施策を実施する点が特徴です。
また、SlackとAWSは、ワークフォースコラボレーションを強化するという共通の目標を持っています。
今後もAWSはSlackを優先するクラウドプロバイダーとして活用し、Slackは組織全体でチームコミュニケーションを効率化するために導入されるでしょう。
最新のアップデートにより、両社のサービス間の統合が強化され、ユーザー体験がさらにシームレスになります。
さらに、AWS Chatbotは、チームがSlack内でAWSリソースを監視し、使用を可能にします。
これにより、DevOpsチームは監視、システム管理、デプロイメントなどのAWS関連の作業をすべてSlack内で実施が可能です。
例:簡易コールセンターシステムを作成する流れ
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ここでは、AWSとSalesforceを使って簡易コールセンターシステムを作成する流れを解説します。
1. Amazon Connectを設定する
Amazon Connectでは、コールセンターの役割を果たすインスタンスを作成し、電話番号を取得します。
インスタントを作成したら、特定の業務に応じたキューを作成し、営業時間を設定しましょう。
オペレーターと窓口を結びつけるルーティングプロファイルを作成し、効率的な担当割り当てを実現します。
組織内の役職に応じてユーザーを作成し、ルーティングプロファイルやセキュリティプロファイルを設定します。
電話を受けてオペレーターにつなぐ流れを設計し、音声ガイダンスや転送設定を行ったら、Amazon Connectの設定は完了です。
2. ServiceCloudを設定する
ServiceCloudでは、AppExchangeからCTIアダプターをインストールし、Amazon Connectとの連携準備を整えます。
インストールしたCTIアダプターを設定し、Amazon Connectのインスタンス情報を入力して接続しましょう。
コールセンター設定で、電話がかかってきた際にSalesforceでどのように情報を表示するかを設定します。
アプリケーションマネージャで「セールス」アプリケーションを編集し、ユーティリティ項目からソフトフォンレイアウトを追加します。
設定後、電話アイコンが表示され、ログイン画面にアクセスできるようになればServiceCloudでの設定は完了です。
3. 正しく動作するか確認する
最後に、実際に電話をかけてみましょう。
まず、Amazon Connectで作成したインスタンスに割り当てられた電話番号に発信します。
数秒後、ソフトフォンが「受話通話」に切り替わり、Salesforceのコンソールに顧客の情報が表示されます。
事前に設定していた検索条件に基づいて、該当する顧客データが自動的に表示され、電話を受ける前に顧客の氏名、住所、過去の取引履歴などの情報の確認が可能です。
これにより、電話を受ける際に事前に必要な情報を把握した状態で対応ができます。
まとめ
AWSとSalesforceは、それぞれクラウドサービスとCRMのリーダーとして、多くの企業に利用されています。
連携させると、顧客サービスの最適化、業務プロセスの自動化・効率化、セキュリティの向上が実現できるでしょう。
具体的な連携パターンとしては、Amazon ConnectとSalesforce Service Cloud Voiceの統合や、AWSとSalesforceをつなぐMuleSoft、Slackとの連携などがあります。
AWSとSalesforceの連携を活用すると、企業はより効率的で効果的なカスタマーサポートやデータ活用を実現し競争力を強化できるでしょう。