【初心者向け】AWSの仕組みをわかりやすく解説|メリットやデメリットとは?
AWSとは、Amazonが提供するサーバーやデータベースを構築できるクラウドサービスです。
AWSを導入しようか迷っている場合、まずは仕組みを理解すると良いでしょう。
本記事では、AWSの仕組みをはじめ、特徴やデメリット、何ができるか解説します。
そのほか、AWSを利用するデメリットもお伝えするので、AWSについて詳しく知りたい場合はぜひ参考にしてください。
AWSとは?わかりやすく仕組みを解説

AWSは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。
企業や個人がインターネット経由でさまざまなITリソースを利用できるようになります。
従来、システムを運用するためには、自社でサーバーを購入・管理する必要がありました。
しかし、AWSのようなクラウドサービスを利用すれば、必要なときに必要な分だけサーバーやストレージを使えるため、コストや管理負担を大幅な削減が可能です。
AWSにはさまざまなサービスがありますが代表的なものは以下の通りです。
- コンピューティング
- ストレージ
- データベース
- ネットワーク
- セキュリティ
- AI・機械学習
AWSは世界中にデータセンターを持っており、上記のサービスを組み合わせてさまざまなサービスを提供します。
AWSの特徴やメリット

AWSを利用する前に、どのようなメリットが得られるか特徴を把握しておきましょう。
ここでは、AWSの特徴やメリットを10個ご紹介します。
特徴1. 従量課金制を採用している
AWSは従量課金制を採用しており、使った分だけ料金が発生する仕組みになっています。
従量課金制とは、水道や電気の料金と同じように、使用量に応じて支払うシステムです。
従来のオンプレミス環境では、サーバーやストレージを購入するために高額な初期投資が必要でした。
AWSなら、サーバーを1時間だけ使うのも可能で最小限のコストでスタートできます。
例えば、ECサイトの運営では、セール期間中はアクセスが増え、それ以外の期間はアクセスが減る可能性があります。
AWSなら、必要なときだけリソースを増やし、不要なときは減らすことが可能です。
その結果、無駄なコストを抑えながら最適なパフォーマンスを維持できます。
特徴2. 継続的に値上げしている
AWSは、2006年のサービス開始以来100回以上の値下げを行っており、利用者にとってコストメリットが大きいクラウドサービスです。
AWSは世界中で膨大なサーバーを運営しており、利用者が増えるほどコスト効率が向上し、価格を下げられます。
ハードウェアやデータセンターの効率化が進むと、AWS自身の運用コストが下がり、その分をユーザーに還元する仕組みです。
過去の値下げ実績の一部は以下の通りです。
- 2008年:Amazon S3の料金を引き下げ
- 2014年:EC2の価格を大幅値下げ
- 2023年:データ転送料金の削減
特徴3. 無料利用期間で節約できる
AWSには、新規ユーザー向けに無料利用枠が用意されており、一定の範囲内で無料でAWSのサービスを試せます。
活用すると初期コストを抑えながらAWSを学び、開発・運用を始められるメリットがあります。
AWSの無料利用枠は主に以下の3種類です。
- 12か月無料枠
- 常時無料枠
- 短期間無料枠
無料枠には使用上限があるため、超過した分は通常の料金が発生してしまいます。
無料枠の12か月はアカウントを作成した日から開始されるので、使う予定がないのにアカウントを作成すると、無料期間を無駄にする可能性があるでしょう。
特徴4. すぐに導入して利用開始できる
従来のオンプレミス環境と比べて、AWSの導入スピードが圧倒的に速いのがメリットです。
オンプレミスでは、サーバーやネットワーク機器の調達、設置、設定に数週間~数か月かかるのが一般的です。
AWSなら、管理コンソールから数クリックでサーバーやストレージを用意できるため、すぐに利用を開始できます。
AWSは、Webサイトから無料アカウントを作成すれば、すぐにサービスを使えるようになります。
特別な契約手続きやハードウェアのセットアップが不要なのが利点です。
特徴5. 利用内容に合わせて自動でサイズを拡張できる
AWSは、システムの負荷やデータ量の増減に応じて、自動でリソースを拡張・縮小できるので、急なアクセス増加にも対応しつつコストを最適化できます。
AWSには、以下のようなサービス・機能があり、負荷に応じて自動的にリソースの拡張・縮小が可能です。
急なアクセス増加でも、サーバーを自動で増やし、処理遅延やダウンを防げます。
例えば、ECサイトのブラックフライデーセール時にアクセスが集中しても、安定した稼働の実現が可能です。
従来のオンプレミス環境では、手動でサーバーを追加・設定する必要がありましたが、AWSでは自動で調整されるため運用の負担が減少します。
特徴6. 即時にグローバル展開している
AWSは、世界中にデータセンターを展開しており、日本国内にも東京リージョンと大阪リージョンがあります。
近くのリージョンやCloudFrontを活用し、どの国でも快適なアクセスが可能です。
別のリージョンにデータをバックアップし、障害時に即時復旧もできます。
そのため、東京リージョンが停止しても、大阪リージョンでサービス継続が実現できます。
特徴7. 運用負荷を軽減できる
従来のオンプレミス環境では、物理サーバーの設置・メンテナンス・アップデートが必要でしたが、AWSではクラウド上の仮想環境を利用するため、以下のような管理が不要です。
- ハードウェアの故障対応
- OSやソフトウェアのアップデート
- 電源・冷却・ネットワーク設備の管理
AWSには、運用を簡素化するマネージドサービスが豊富に用意されています。
AWSのマネージドサービスを利用すると、日々のシステム運用の負担を大幅に削減することが可能です。
AWSのAuto Scaling機能を利用すれば、サーバーの増減を自動で調整できます。
手動でサーバーを増減する必要がなくなり、運用の負担が減ります。
特徴8. 機能拡張を繰り返している
AWSは、年に数千件以上の機能拡張を実施しており、多くの新サービスが発表されているのが特徴です。
新サービスの追加だけでなく、既存サービスの機能強化も積極的に行っています。
システムを変更せずに、AWSの進化をそのまま活用できる点が魅力です。
AWSは、AI・機械学習・IoT・ブロックチェーン・セキュリティなど、最先端技術の機能追加を続けています。
最新技術を活用し、競争力のあるシステムを構築できるでしょう。
特徴9. 高いセキュリティを提供している
AWSのデータセンターは、厳格な物理セキュリティ対策が施されています。
外部からの侵入や自然災害にも強い、安全な環境を提供している点がメリットです。
AWSでは、データの機密性を守るための暗号化機能を標準で提供しています。
データが漏えいしても暗号化されているため、第三者に解読されるリスクが低いです。
また、アクセス管理を厳密に制御できる機能により、不正アクセスを防ぎ、必要な人だけがデータにアクセスできる環境がつくれます。
特徴10. サポートプランが充実している
AWSは、クラウドサービスの利用をサポートするために、複数のサポートプランを提供しており、利用者が自分のニーズに合わせて最適なサポートを受けられます。
ベーシックサポートは、無料で利用できるサポートプランです。
主に以下のサービスが含まれています。
- AWSサービスのドキュメント:利用者が自分で解決できるように、AWSのサービスに関する詳細なマニュアルやヘルプを提供
- オンラインフォーラム:他のAWSユーザーと情報を交換できるコミュニティフォーラム
- AWS Trusted Advisor:ベストプラクティスに基づいて、コスト削減やセキュリティ、パフォーマンスの改善提案
基本的なリソースやヘルプを利用でき、コストが発生しません。
そのほか、開発者サポートプランやビジネスサポートプラン、エンタープライズサポートプランを提供しています。
エンタープライズサポートプランは大規模な企業向けの最上級サポートプランで、特に、複雑なインフラやミッションクリティカルな環境に適しています。
AWSって何ができるの?

AWSについて詳しく知りたい場合は、そもそもAWSでどのようなことができるか把握しましょう。
ここでは、AWSでできることを9つご紹介します。
1. サーバー構築
AWSは、サーバー構築に関して非常に柔軟で強力な機能を提供しており、物理的なサーバーを購入・管理する手間を省き、必要なリソースを迅速にオンデマンドでプロビジョニングできます。
AWSを利用すると、スケーラブルでセキュリティの高いサーバーインフラを簡単に構築し管理が可能です。
Auto Scalingを使えば、トラフィックや負荷に応じてインスタンスの数を自動的に増減できます。
その結果、ピーク時のトラフィックにも対応でき、コストの最適化も図れます。
2. Webサイト構築
AWSは、Webサイトの構築に必要なあらゆるサービスを提供しており、高可用性、高セキュリティ、スケーラビリティを備えたWebサイトの構築を簡単に実現が可能です。
AWSを使うと手軽にかつ大規模なトラフィックをさばけるWebサイトを構築できるため、個人ブログから企業の大規模なWebサイトまで、あらゆる規模のサイトに対応できます。
多くのWebサイトでは、データベースを利用してデータの保存や管理を行います。
AWSでは、Amazon RDSを使って、データベースを簡単にセットアップし、運用管理が可能です。
Webサイトに多くのトラフィックが訪れる場合、Elastic Load Balancerを使うと、トラフィックを複数のサーバーに分散し、負荷分散を行います。
その結果、Webサイトの可用性とパフォーマンスが向上するでしょう。
3. データベース
AWSでは、さまざまなデータベースサービスを提供しており、ニーズに応じたデータ管理が可能です。
これらのサービスは、スケーラビリティ、高可用性、セキュリティを備えたデータベースソリューションを提供します。
AWSのデータベースサービスは、リレーショナルデータベース、NoSQLデータベース、データウェアハウス、キャッシュストレージなど、さまざまな用途に対応しています。
Amazon RDSは、リレーショナルデータベースのセットアップ、運用、スケーリングを簡単にするフルマネージドサービスです。
RDSでは、SQLベースのデータベースエンジンを使用できます。
数クリックでデータベースインスタンスを作成し、定期的なバックアップ、ポイントインタイムリカバリをサポートします。
Amazon Auroraは、AWSが提供する高速でスケーラブルなリレーショナルデータベースエンジンで、MySQLやPostgreSQLと互換性があるのが特徴です。
従来のRDSのインスタンスに比べて最大5倍高速で、より高いスケーラビリティと可用性を提供します。
4. データ保管
AWSは、高度なデータ保管ソリューションを提供しており、企業や開発者がデータを効率的に保管、管理、バックアップ、アーカイブするために利用できるさまざまなサービスを提供しています。
これらのサービスは、スケーラビリティ、セキュリティ、高可用性を備えており、データを効率的に扱うための柔軟な選択が可能です。
Amazon S3は、AWSのフルマネージドなオブジェクトストレージサービスで、ほぼ無限のスケーラビリティを実現します。
静的ファイル、バックアップ、アーカイブなどのデータ保管に最適です。
Amazon EBSは、EC2インスタンスに接続して使用するブロックストレージサービスです。
データベースやファイルシステムなどの、高速な読み書きが求められる用途に適しています。
Amazon Glacierは、データの長期アーカイブ用の低コストストレージサービスです。
主にアクセス頻度が少ないデータや、数年以上保存する必要があるデータの保管に使用されます。
5. コールセンター機能
AWSは、企業が効率的なコールセンターを構築できるためのフルマネージドサービスを提供しています。
AWSを利用すれば、コールセンターの運用がクラウド上で柔軟にスケーリングでき、コスト効率の高い方法で顧客サポートが可能です。
AWSのコールセンター機能は、通話管理、自動応答、分析機能などを一元的に提供し、企業が顧客体験を向上させるために活用できます。
Amazon Connectは、AWSが提供するフルマネージドのクラウドコールセンターサービスです。
企業は、Amazon Connectを利用して、通話、チャット、メッセージングなどを通じて顧客と効果的にコミュニケーションを取れます。
Amazon Connect Chatは、Amazon Connectの一部として提供される、顧客とエージェントがリアルタイムでチャットできる機能です。
活用すると、電話以外のチャネルを通じて効率的に顧客サポートが行えます。
6. VDIの構築
VDIは、仮想化技術を用いて、デスクトップ環境を仮想化し、リモートでアクセスできるようにするシステムです。
企業や組織が物理的な端末を使わず、どこからでもデスクトップ環境を利用できるようにするため、リモートワークやBYOD環境での導入が進んでいます。
AWSでは、VDIを簡単に構築・管理できるサービスを提供しています。
Amazon WorkSpacesは、AWSが提供するフルマネージドな仮想デスクトップサービスで、企業はユーザーにリモートでアクセスできるデスクトップ環境を簡単に提供が可能です。
従来のPC環境を仮想化すると管理が簡素化され、コスト削減とセキュリティ向上が実現できます。
Amazon AppStream 2.0は、アプリケーションのストリーミングサービスです。
従来のVDI環境とは異なり、アプリケーションを仮想マシン上で実行し、ユーザーのデバイスに直接ストリーミングする方式で、デスクトップ環境を仮想化せずにアプリケーションだけを提供できます。
7. BIツール
BIツールは、企業がデータを分析し、意思決定をサポートするための重要なツールです。
AWSでは、BIツールを活用するためのフルマネージドサービスや、高度な分析機能を提供するサービスを利用して、データの収集、分析、可視化を効率的に行えます。
企業はデータ駆動型の意思決定を迅速に行え競争力を高められるでしょう。
Amazon QuickSightは、AWSが提供するフルマネージドなBIツールで、企業がデータの可視化、分析、ダッシュボード作成を簡単に行えるサービスです。
Big Dataやクラウド上のデータを使って、高速でインタラクティブなレポートやダッシュボードを作成できます。
Amazon Redshiftは、AWSのフルマネージドなデータウェアハウスサービスで、BIツールに最適なデータストレージと高速クエリを提供します。
BIツールと連携して、膨大なデータセットに対して効率的に分析が可能です。
8. 機械学習サービス
AWSは、機械学習のモデルの作成、トレーニング、デプロイを支援する豊富なサービスを提供しています。
これらのサービスを利用すると開発者やデータサイエンティストは、データの分析や予測分析、画像認識、自然言語処理など、さまざまなMLタスクを効率的に実行が可能です。
AWSの機械学習サービスは、専門的な知識がなくても利用できるように設計されており、柔軟でスケーラブルな学習環境を提供します。
Amazon SageMakerは、フルマネージドの機械学習開発環境を提供するAWSのサービスで、MLモデルの開発、トレーニング、デプロイを一貫してサポートします。
機械学習に関する高度なスキルを持たないユーザーでも利用でき、簡単に機械学習モデルを作成が可能です。
Amazon Rekognitionは、画像や動画の分析に特化した機械学習サービスで、顔認識、物体検出、シーン分析、テキスト認識などを行います。
自動で画像・動画の内容を理解し、タグ付けや分類の実行が可能です。
9. IoTサービス
AWSは、IoTソリューションに関しても豊富なサービスを提供しています。
これらのサービスを利用するとデバイスの接続、データの収集、解析、モニタリング、アクションの実行など、IoTソリューションを迅速に構築・展開が可能です。
AWSのIoTサービスは、スケーラブルで高信頼性の高いシステムを提供し、企業や開発者が多様なIoTアプリケーションを作成できるようサポートします。
AWS IoT Coreは、デバイスをインターネットに接続し、クラウドと双方向で安全に通信を行えるようにするサービスです。
セキュリティ、スケーラビリティ、メッセージングの管理を簡素化します。
AWS IoT Device Managementは、大規模なIoTデバイスの管理、監視、更新、保守を支援するサービスです。
デバイスのライフサイクル全体を通じて、管理が簡単に行えます。
AWSのデメリット

AWSのメリットだけではなく、デメリットも把握した上で導入するか判断しましょう。
ここでは、AWSを利用するデメリットを2つご紹介します。
デメリット1. 利用料がドルベースで換算される
AWSの料金は米ドル設定されており、日本円で支払う場合は為替レートによって変動します。
円安が進むと、同じサービスを利用していても支払額が増えてしまうケースがあるでしょう。
AWSの月額費用が100USDの場合、1ドルが110円だと11,000円、1ドルが150円だと15,000円です。
近年の円安傾向では、AWSの利用料が実質的に高くなってしまうケースが多く発生しています。
為替レートの変動により、毎月の支払額が変動するため、正確なコスト予測が難しいという問題があります。
特に、固定予算を組んでいる企業にとっては、予算オーバーのリスクが高まるでしょう。
デメリット2. クレジットカードの登録が必要である
AWSのアカウントを作成する際、クレジットカードまたはデビットカードの登録が必要です。
クレジットカードを持っていない個人や法人、クレジットカードの利用を避けたい企業は利用が難しくなります。
特に、新規事業を立ち上げたばかりの企業や、法人クレジットカードを持っていない企業にとっては、AWSの利用開始のハードルが上がる要因の1つです。
また、AWSでは、基本的にクレジットカード払いが必須ですが、法人向けには以下のような代替手段もあります。
- 請求書払い(インボイス払い)
- AWSの請求代行業者を利用
個人ユーザーや小規模事業者の場合、クレジットカード以外の選択肢がほぼないため、これは大きなデメリットになるでしょう。
まとめ
AWSは、インターネット経由でさまざまなITインフラを提供するクラウドサービスです。
従量課金制を採用し、必要な分だけ利用できる柔軟性が特徴です。
また、無料利用枠があるため、コストを抑えながら導入できます。
サーバーやデータベースの構築、機械学習やIoTなど多彩なサービスを提供し、運用負荷の軽減やグローバル展開を容易にします。
一方で、ドル建て請求による為替リスクや、クレジットカード登録が必須といったデメリットもあります。
AWSの特性を理解し適切に活用すると、スピーディーかつ効率的なシステム構築が可能です。