マイグレーションとは?実施する流れや注意点を解説
マイグレーションとは、システムやインフラを別の環境に移す流れのことです。
マイグレーションにはさまざまな種類があり、流れを事前に把握しておくのがポイントです。
本記事では、マイグレーションの種類と実施する流れをご紹介します。
そのほか、マイグレーションを実施するときの注意点もお伝えするので、システムやインフラの移行を検討している場合はぜひ参考にしてください。
目次
マイグレーションとは?

マイグレーションとは、データ、アプリケーション、システム、またはインフラを一つの環境から別の環境へ移行するプロセスです。
システムのアップグレードや新しいテクノロジーの導入、コスト削減、またはパフォーマンス向上などの目的で行われるケースが多いです。
コンバージョンとの違い
マイグレーションとコンバージョンは、どちらもデータやシステムを新しい環境や形式に移行するプロセスですが目的や方法が異なります。
マイグレーションの目的は、データ、アプリケーション、システム、またはインフラを別の環境に移行することです。
主に、新しい技術やプラットフォームへの移行、スケーラビリティの向上、コスト削減、または性能向上を目指して行われます。
コンバージョンの目的は、既存のデータやファイル形式を新しい形式に変換することです。
主に、異なるシステムやアプリケーション間でデータをやり取りできるようにするために行われます。
マイグレーションはシステムやインフラ全体を新しい環境に移行することを指すのに対して、コンバージョンはデータや情報を一つの形式から別の形式に変換することを指します。
マイグレーションは環境全体の移動、コンバージョンはデータやファイルの形式変更が主な目的です。
マイグレーションの種類

マイグレーションを実施する前に、どのような種類があるか把握しておきましょう。
ここでは、マイグレーションの種類を5つご紹介します。
データマイグレーション
データマイグレーションとは、あるシステムから別のシステムへのデータの移行です。
データの移行は、通常、異なるデータベースやファイル形式、またはオンプレミスからクラウド環境への移行など、さまざまなシナリオで発生します。
データの正確性を保ち、効率的に移行するのが重要です。
古いシステムやデータベースから新しいシステムにデータを移行して、性能向上や新しい機能を利用するのが主な目的です。
オンプレミス環境のデータをクラウドサービスに移行して、スケーラビリティや柔軟性を高めるのを目的に行われるケースもあります。
移行中にデータが失われたり破損したりするリスクがあるため、バックアップと復旧計画が必要です。
異なるシステム間でデータの互換性がない場合、変換作業を行わなければいけません。
データマイグレーションは、適切に計画しテストを行うと、リスクを最小限に抑えスムーズに実施できます。
ライブマイグレーション
ライブマイグレーションとは、システムやアプリケーションをダウンタイムなしで、リアルタイムで移行するプロセスです。
特に、仮想マシンやクラウド環境において、サーバーやサービスを中断せずに、稼働中の状態で移行を行うのが特徴です。
ライブマイグレーションは、システムの可用性を保ちながら移行作業を行えるため、重要な業務システムやサービスに対して非常に有効な手段として注目されています。
ただし、リアルタイムでの移行は非常に複雑で、システム全体の状態を常に監視し、移行を中断せずに進める必要があります。
サーバーマイグレーション
サーバーマイグレーションとは、物理的または仮想的なサーバーを、別の場所や環境に移動するプロセスです。
サーバーのハードウェアやソフトウェア、設定、データなどを含んでおり、主にインフラストラクチャのアップグレード、コスト削減、スケーラビリティの向上、または他の技術的要件に応じて行われます。
サーバーマイグレーションにはさまざまなタイプがあり、クラウド環境、データセンター内の移行、物理サーバーから仮想サーバーへの移行などが含まれます。
物理サーバーが古くなった場合、パフォーマンスや信頼性が低下するため、新しいサーバーへの移行を通じてシステムを最新の状態に保つのが主な目的です。
仮想化やクラウドに移行すると、リソースの効率化が進み、管理コストや運用コストを削減できます。
より高い可用性を提供するクラウド環境や仮想化環境に移行すると、ダウンタイムを減少させサービスの中断を防止が可能です。
クイックマイグレーション
クイックマイグレーションは、システムやデータの移行プロセスを迅速に実施することを目的としたマイグレーション手法です。
通常のマイグレーションに比べて短期間で完了させることが求められる場合に使用されます。
特に、緊急の状況や業務の中断時間を最小限に抑える必要がある場合に有効です。
ただし、時間をかけずに移行するため、計画やテストが不十分になる場合があり、予期しない問題が発生するリスクがあります。
通常の移行と比べて、クイックマイグレーションでは十分な準備をする時間がないため、移行後のシステムに不具合が残る可能性が高くなります。
クイックマイグレーションは、特定の条件下で非常に便利ですが、計画と準備が十分でないと後々問題を引き起こす可能性があるため、慎重な実施が大切です。
レガシーマイグレーション
レガシーマイグレーションとは、古いシステムを新しいシステムに移行するプロセスです。
レガシーシステムとは、過去に導入されたけど現在では技術的に時代遅れになったシステムやアプリケーションを指します。
通常、保守が難しくなったり新しい技術に対応できなくなったりする場合が多いため、効率性やセキュリティの向上を目的として、新しいプラットフォームやアーキテクチャに移行する必要が生じます。
レガシーマイグレーションは、新しいシステムに移行すると長期的な保守コストやインフラコストを削減できる点がメリットです。
処理速度や応答速度の向上が期待できたり、ビジネスの成長に応じてスケールアップやスケールアウトが可能になったりとさまざまなメリットがあります。
ただし、移行には時間とコストがかかり、場合によっては業務の中断を伴うケースがあります。
移行中に新しいシステムに問題が発生した場合、ビジネスに影響を与える可能性があるので注意しましょう。
マイグレーションを実施する流れ

マイグレーションを実施するとき、流れを事前に把握しておくとスムーズに工程を進められます。
ここでは、マイグレーションを実施する流れを4つのステップに分けて解説します。
ステップ1. 方針を決める
マイグレーションの第一歩は、移行の目的や方向性を明確にすることです。
なぜマイグレーションを行うか、どのインフラに移行するかを決めます。
そのほか、マイグレーションのタイムラインや各ステップの期日、マイグレーションに必要な人材、予算、ツールなども確認しましょう。
移行の全体像と方針を固めることが、スムーズなマイグレーションの基礎となります。
ステップ2. 移行計画書を作成する
方針を決めたら、詳細な移行計画書を作成します
移行するシステムやデータ、アプリケーションなどをリストアップしましょう。
移行に伴うリスクを予測し、リスクに備えて対策を考えます。
移行に必要なチームメンバー、ツール、サーバーなどのリソースを決定するのも大切です。
ステップごとの移行作業手順を文書化し誰が何を担当するのかを明確にして、移行後のテスト計画も立ててシステムの正常性を確認する方法を定めます。
移行計画書は、マイグレーションの成功に向けてのロードマップとなり進行中におけるガイドラインです。
ステップ3. 移行のリハーサル・判定を行う
リハーサルは、実際に本番で移行を行う前に、システム全体を移行するテストを実施するステップです。
計画書通りに手順が実行できるか、技術的な問題がないかをテストします。
移行後のシステムが要求に対してパフォーマンスを発揮できるか確認しましょう。
移行における問題点やリスクを洗い出し、対処する方法を再評価するのがポイントです。
万が一、リハーサルで問題が発生した場合に備えて、バックアップが正常に動作しているか確認します。
リハーサルを通じて、予期しない問題を事前に解決できるため、移行の成功確率が高まります。
ステップ4. 移行の本番を行う
すべての準備が整ったら、実際の本番移行を行いましょう。
データやアプリケーションの移行には、データベースの移行やファイル転送などが含まれます。
新しいシステムに正式に切り替え、業務を稼働させます。
移行後にシステムが正常に稼働しているか、機能やパフォーマンスが問題ないか確認し、移行後もシステムをモニタリングしましょう。
本番移行で予期しない問題が発生した場合、リハーサルで確認しておいた対策を実施します。
本番移行は、通常業務に支障が出ないよう計画的に実施することが求められ、完了後は運用サポートがはじまります。
マイグレーションを実施する際の注意点

マイグレーションを実施する際、流れとともに注意点も把握しておきましょう。
ここでは、マイグレーションを実施するときの注意点を4つご紹介します。
1. 下準備を徹底して行う
マイグレーションを成功させるためには、徹底的な下準備が不可欠です。
この段階での準備不足は、後の作業に大きな影響を及ぼし、予期せぬトラブルを引き起こす可能性があります。
下準備をしっかりと行うと円滑な移行を実現し、ダウンタイムやリスクを最小限に抑えるための鍵となります。
まず、移行するシステムやデータの内容をしっかりと把握するのが重要です。
どのシステムやアプリケーション、データを移行するのかを明確にし、移行対象をリスト化しておくと、必要なリソースや時間、技術的な要件を適切に見積もりが可能です。
移行前に必ずバックアップを取りましょう。
移行作業中に問題が発生した場合に、元の状態に戻すためのバックアップがあれば、リカバリが迅速に行えます。
2. ニーズに応じた移行先の選出
マイグレーションの成功には、移行先の選定が非常に重要です。
ニーズに応じた移行先を選ばなければ、移行後にシステムのパフォーマンスや機能に問題が発生する可能性が高く、結果的に運用に支障をきたす恐れがあります。
まず、移行の目的が明確であるのが重要です。
例えば、システムのスケーラビリティを向上させたい、コスト削減を目指す、災害復旧の強化を図る、新しい技術を導入したいなど、ビジネスのニーズに応じて移行先を選定します。
移行先の環境が、必要なパフォーマンス要件を満たしているか確認するのも重要です。
例えば、サーバーやストレージのスペック、ネットワーク帯域の能力、レスポンスタイムの要件など、システムに求められる性能を十分に発揮できる移行先を選びます。
これを怠ると、移行後にシステムが遅くなったり、応答性に問題が生じたりする可能性があります。
3. 従業員や関係者への周知とサポートを行う
マイグレーションのプロセスは、組織全体に影響を及ぼす場合が多いため、従業員や関係者への周知とサポートが重要です。
移行作業はシステムや業務プロセスに変化をもたらすため、関係者の理解と協力が欠かせません。
適切な周知とサポートを行うと、移行後のトラブルを減らし、スムーズな運用移行が可能になります。
マイグレーションが開始される前から、従業員や関係者に対して早期に情報を提供しましょう。
具体的には、移行の目的、スケジュール、影響範囲、期待される成果について説明します。
従業員が移行の理由を理解し、移行の重要性を認識できるようにすると協力を得やすくなります。
4. 必要に応じてアウトソーシングを行う
マイグレーションは非常に複雑なプロセスであり、特に大規模なシステム移行やデータの移行作業では、高度な技術や専門的な知識が必要となる場合があるでしょう。
外部委託を活用すると、プロジェクトの円滑な進行と品質の確保が可能です。
マイグレーションに関わる作業は、単なるデータ転送にとどまらず、システムの設計、インフラの構築、アプリケーションの適応、ネットワーク設定、セキュリティの確保など、広範囲にわたる作業を含みます。
高度な専門知識が必要であり、社内のリソースが不足している場合は、外部の専門業者に委託するのが効果的です。
アウトソーシングにより、最新の技術やベストプラクティスを取り入れられ、効率的で信頼性の高いマイグレーションを実現できます。
まとめ
マイグレーションは、システムやデータ、アプリケーションなどを新しい環境に移行するプロセスです。
これには、データ移行やサーバー移行など、さまざまな種類があります。
マイグレーションを成功させるためには、事前の計画、リハーサル、本番移行といったステップを順番に実施し、注意点としては下準備や移行先の選定、関係者への周知が重要です。
また、外部の専門業者にアウトソーシングするとリソース不足やリスクを軽減でき、全体として慎重な準備と実行が求められます。